タイムスタンプの使い方|電子化した書類の正当性を証明するには?
内部資料から請求書などの証憑(しょうひょう)まで、これまで紙で保存されていた幅広い書類の電子化が多くの企業で推進されています。書類の電子化は働き方改革やDXといった観点からも重要な施策の1つですが電子データの改ざんなど、紙の種類にはなかったリスクに対応する必要もあります。
その対策の方法の1つが「タイムスタンプ」です。今回は、国が定める電子データの保存要件にも加えられているタイムスタンプの役割と、付与までの流れについて解説します。
タイムスタンプの基礎知識
業務のなかでデジタル化した書類に触れることが少ない人にとっては、タイムスタンプは聞き馴染みのない用語かもしれません。しかし電子化した書類を業務で運用するうえでは非常に重要な役割を担っています。その基礎知識を解説します。
タイムスタンプとは
タイムスタンプは電子データがある時刻の時点で存在し、内容の改ざんが行われていないことを証明する技術のことです。電子化した文書は紙の資料と比べると、作成後の編集がしやすいうえにその形跡も残りにくいことからデータ改ざんのリスクが特に懸念されています。
タイムスタンプはデータ改ざんの対応策として1990年代初頭に米国のSurety社が商用タイムスタンプ発明し、日本では2000年代から普及が始まりました。現在は、総務省の指針に則って一般財団法人データ通信協会が認定した第三者機関がサービスを提供しています。
社内外を問わず、ビジネスシーンにおいては電子データの信憑性は非常に重要なため、紙の書類を電子化する際はタイムスタンプの発行が求められるケースが多くあります。
捺印が必要な業務がある
出張旅費の申請などの社内の承認フローに、捺印を必要としている規定を設けている企業は少なくありません。
社内で管理している書類に捺印を押すために、オフィスに出社しなければならない事例は、新型コロナウイルス感染症拡大における非常事態時でも大きな問題となりました。
タイムスタンプを付与する主な書類
電子化したデータのなかには、国税関係書類のようにタイムスタンプを付与しなければ正式な書類として認められないものがあります。国税関係書類とは発注書や納品書、請求書、決算書など、国税庁などに提出もしくはその後の一定期間の電子保存が義務付けられている書類や証憑のことです。
タイムスタンプが必要な理由と不要になるケース
タイムスタンプは全ての書類に必要なわけではありません。タイムスタンプが求められる理由と反対に必要でないケースについて解説します。
タイムスタンプが必要になる理由
2022年の電子帳簿保存法の改正によって、タイムスタンプの要件が緩和されました。具体的な内容は以下の3点になります。
・付与期間がこれまでの約3日から最長2カ月+7営業日以内に延長
・スキャニング時の自署が不要になる
・訂正、削除の履歴が確認できるシステムを利用する場合はタイムスタンプが不要になる
※データの修正履歴が残る、修正や削除が不能などのいずれかの条件を満たすこと
これらの緩和に加えて必須だった原本と電子化したデータの突合もいらなくなるので、スキャナー保存で国税関係書類を電子化するハードルはかなり低くなったといえるでしょう。
タイムスタンプの使い方・付与までの流れ
タイムスタンプの付与の流れを確認しましょう。電子帳簿保存法が改正されて要件が緩和されたとはいえ、書類の電子化が推し進められる昨今の経理や総務の現場状況を考えると、担当者はタイムスタンプの使い方を覚えておいて損はありません。
書類のデータを送る
まずはタイムスタンプを付与する書類を用意しましょう。タイムスタンプをすべき書類は、紙をスキャンして電子化(PDF化)したものが一般的です。スキャナーやコピー機、複合機だけでなく、2016年の電子帳簿保存法の改正に伴いスマートフォンやタブレットでのカメラ撮影も認可されています。
タイムスタンプを付与したい書類を用意する
タイムスタンプの発行を認可されている事業者に、メールや指定のフォームからデータを送付して付与を依頼します。また、スキャンして作成したPDFデータにタイムスタンプを即座に付与できる複合機も開発、販売されています。タイムスタンプが必要な書類の量や頻度に応じて、ベストな方法を選択しましょう。
タイムスタンプを付与する
タイムスタンプの付与を依頼された事業者は、送付された電子データを確認し、一定のルールに則って入力されたデータから算出する特定の値である「ハッシュ値」を生成します。そして、ハッシュ値をもとにして電子データにタイムスタンプを付与します。タイムスタンプを付与する前と後で、ハッシュ値が一致していれば改ざんが行われていない証明になります。
ビジネス書類の電子化におすすめの複合機
2022年1月からスキャナー保存に関わるタイムスタンプの要件が緩和されましたが、スキャナー保存そのものにも「真実性の確保」と「可視性の確保」の観点から、体制・機器・システムの要件が定められています。スキャナー保存による電子化に取り組む際は、諸要件を満たした機器を選ぶようにしましょう。
タイムスタンプを使って書類の電子化を推進しましょう
数ある書類のなかでも、事業規模や業種に関わらず作成しなければならないものが国税関係書類です。日々発生する請求書などの電子化で得られる業務効率化などのメリットは、とても大きいので2022年1月に要件が緩和されるタイミングで取り組み始める企業も少なくないでしょう。その際はタイムスタンプの要件を把握してスムーズに対応できるように、機器などのハード面と運用体制などのソフト面をしっかりと構築することが大切です。
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