【2022年版】電子帳簿保存法改正に向けて準備することや検討ポイント

企業の日常業務では社内の契約や承認申請や他社との取引といった多様な場面で、多くの書類が用いられています。各種契約書や申請書のほか、領収書・請求書・見積書・注文書をはじめとした帳簿書類など、その種類はさまざまです。従来は紙の原本の保存期間が定められていた書類も、電子データの普及に伴い保管や破棄のルールが変化しています。

国税に関する帳簿や書類を電子データの形式で保存する際の方法やルールについて定めた法律「電子帳簿保存法」は、時代の変化に応じてこれまでにも法改正が行われてきました。2022年(令和4年)1月の改正ではデータ保存の方法について見直しが行われました。本コラムでは電子帳簿保存法改正へ向けて、企業が準備すべきことをお伝えします。

【2022年】電子帳簿保存法の主な改正点

2022年4月1日以降、改正電子帳簿保存法が施行されます。改正後は企業の業務プロセスでどのような対応方法が求められるのでしょうか。初めに、改正の内容について解説します。

【2022年】電子帳簿保存法の主な改正点

電子データ保存要件の緩和

これまで定められていた規制が緩和され、最低でも以下の3つの要件を満たせば電子データの保存が認められるようになりました。

・管理するシステムに関する書類を備え付けている
・管理している電子データをすぐに閲覧および印刷できる体制がある
・税務職員による電子データダウンロードの求めに対応できる

また、電子データの検索性の要件が「日付」「取引金額」「取引先」の3項目のみに緩和された点もポイントです。

事前承認の廃止

従来は国税関係帳簿や書類を電子データで保存したい場合、原則3カ月前までに税務署長からの承認が必要でした。改正後は事前承認の制度が廃止され、事務手続きの負担が軽減されます。

スキャナー保存要件の緩和

スキャナーで書類を読み取って電子化する際のルールが改正され、運用しやすくなります。例えば、書類を受領した人の電子署名が不要となるのに加え、特定の条件を満たせばタイムスタンプの付与も不要となります。タイムスタンプを付与する期限も、受領者が書類を受け取ってから最長2カ月と7営業日までに延長されました。また、これまで不正防止の観点から規定されていた適正事務処理要件も廃止されます。

電子取引におけるデータ保存の義務化

電子取引とは、PDFや専用のWebシステム、EDI取引などで電子データをやり取りする行為のことです。電子データで受け取った電子取引書類は、電子データのままでの保存が義務化されます。その際、プリントアウトした書面の保存は認められません。これらは全ての事業者に適応されるため、各企業で体制の準備が必要です。

ただし、データ保存の義務化には改正から2年間(2022年1月1日~2023年12月31日)にわたり宥恕措置(ゆうじょそち)が設けられています。企業によっては、電子データ保存への早急な対応が困難なケースも存在するため、これに配慮して一定の要件を満たす場合に電子取引の紙保存が認められます。宥恕措置の対象となるには、やむを得ない事情があること、かつ出力した書面の提示や提出に対応できることが要件です。

【出典】「令和4年度税制改正の大綱(8)電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備」(財務省)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/20211224taikou.pdf

不正発覚時の罰則追加

データの改ざんや削除が発覚した場合、重加算税を加重するペナルティが課されます。不正が見つかったときに課される重加算税に加えて10%加重されるため、注意が必要です。

電子帳簿保存法改正に向けて準備すべきこと

改正電子帳簿保存法に対応するには、場合によっては今後の業務で電子データの保存方法を見直す必要があるかもしれません。保存義務に対応するためのデジタル化やペーパーレス化に関して、注意点をご確認ください。

電子帳簿保存法の改正に向けて準備すべきこと

電子データの閲覧が可能なデバイスと印刷可能な機器の用意

電子データ保存の要件の1つに「見読性の確保」があります。PCやディスプレイで電子データをすぐに閲覧できるようにしておくこと、またプリンターや複合機を備えて電子保存したデータが印刷できる状態にしておくことが必要です。

電子データの検索が可能な体制の確保

電子データの検索に関しては、基本的に以下の3つの要件全てを満たす必要があります。

1.「日付」「取引先」「取引金額」の3項目でデータが検索できる
2.「日付」と「取引金額」は範囲指定検索ができる
3.いずれか2つ以上の項目を組み合わせた検索ができる

上記の2と3に関しては、税務職員によるダウンロードの求めに応じることが可能ならば、満たしていなくても問題ありません。多くの企業では、電子データの検索機能を有する管理ソフトが用いられています。また、電子データのファイルに「日付」「取引先」「取引金額」が含まれる名前を付けることでも対応可能です。
(例)20220218_◯◯株式会社_1,000,000.pdf

ファイル名を連番にして表計算ソフトなどで対応表を作る選択肢もあります。自社の業務に適した方法をご検討ください。

  

要件を満たす保存体制の確保

電子データの保存体制では、以下の4つのうちいずれかの要件を満たす必要があります。

1.受け取る電子データ全てにタイムスタンプを付与する
2.電子データ受け取り後2カ月以内にタイムスタンプを付与する
3.電子データの変更や削除履歴が残るシステムを利用する
4.電子データの訂正や削除に関する事務処理規程を定める
上記1に関しては、取引先との協力が不可欠なためあまり現実的ではありません。2の要件を満たすには、タイムスタンプの運用体制を整えることが必要です。3は専用の管理システムを導入して対応するケースが多くあります。4は定めるべき項目の例が国税庁のホームページに記載されているので、詳細をご確認ください。

【出典】「参考資料(各種規程等のサンプル)」(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

  

関連書類の備え付け

社内の担当者へ向けて、業務で使用するPC・プリンター・システムなどの概要書や操作説明書を用意します。操作マニュアルの保存形式は、紙でもデータでも構いません。その際、オンラインマニュアルやヘルプ機能が機器やソフトに組み込まれている場合は、マニュアルが用意されている状態と同じ扱いになります。

  

電子帳簿保存法改正に対応するために検討すべきこと

電子データの保管に際して、会計ソフトや経費精算システム、クラウドサービスなどのシステム導入に踏み切るには、社内で一定の準備が必要です。最後に、準備段階で検討すべきことをご紹介します。

電子帳簿保存法改正に対応するための準備で検討すべきこと

社内で管理している書類の棚卸し

法改正に伴い、社内に電子化の対象となる書類がどれほどあるのか、棚卸しして把握します。特に電子取引に該当する書類がある場合には、優先的に電子化を実施することが必要です。電子取引におけるデータ保存の義務化に伴い、罰則の対象となる点にご注意ください。

 

社内ルールの整備

書類や帳票を電子化することで、業務の社内フローが変わるおそれがあります。例えば、経理業務で用いる会計システム上の対応が変わったり、多くの社員にかかわる経費精算で添付書類のルールが変更となったりすることも。電子化によって起こり得るリスクについても把握しておく必要があります。どのようなトラブルが想定されるか、ルールの見直しは必要になるかなどの観点から検討することが重要です。

 

使用するシステムの選定

多くの書類を電子化して管理する場合は、専用のシステムを導入するのが一般的です。規定通りにファイルをリネームするのは時間がかかる上、煩雑になりやすいため、自社の利用状況や電子化の目的にあった製品をお選びください。運用のしやすさを考慮すると、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が電子取引の要件を満たすソフトに付与する「JIIMA認証」を受けたソフトの導入が望ましいとされます。

 

電子帳簿保存法改正の要点を押さえて社内の準備を

今回は電子帳簿保存法の改正へ向けた準備について解説しました。京セラでは、2022年の電子帳簿保存法改正に対応するソリューションを提供しています。電子帳簿保存法に対応したワークフローを、社内へスムーズに導入可能です。電子化対応の事前準備から、電子化した書類のさらなる業務活用まで手厚くサポートいたします。導入を検討される企業様は、詳しい説明や気になる疑問への回答を掲載したPDF資料を下記ページからダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。

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